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「マホメット」(井筒俊彦、講談社学術文庫)についてです。

今まで私の中では、イスラム教は圧倒的なカリスマ性をもつ宗教指導者マホメットにより突如生みだされた、という印象が強かったです。しかし本書を読み、実際はそこに砂漠世界特有の思想的背景があったことを知りました。これは、どんな歴史的事件も一人の英雄によって作られたことはなかった、と考えると当然ではあります。ただ、特に一神教宗教の誕生においては、やはり一人の宗教的天才に依るところが多いというイメージがありました。

―無道時代(マホメット誕生以前)の精神的状況―

マホメット誕生以前のことです。この時期の砂漠世界の価値観は「部族とともに迷い、部族とともに正道をいく」でした。つまり部族は砂漠的人間の存在の根源、原理。部族を言い換えると「血」ですね。血縁による共同性。

もちろんその中で砂漠的人間独特の徳も生まれてくる。一種の砂漠の騎士道といえるもの。端的にいうと、その高貴な血統に恥じない行動をすることが内容に。

しかしマホメットが誕生した頃には、すでに砂漠のアラビア人の精神は危機的状況にあった。

その原因は彼ら砂漠の民の思考法にある。彼らの感覚は、特に聴覚と視覚は、砂漠の厳しい環境で生存していくために異常に発達していた。しかしその発達した感覚があだとなり、彼らは世界を論理的に(因果律に基づいて)統一的に把握すること、ないしは感覚世界を超越した形而上的世界や夢の世界を思考できなかった。

もしそんな彼らが自分たちの人生の無常さを感じるようになり、現世の儚さを感じるようになるとどうなるか?

彼らは形而下の世界でしか生きられない。袋小路に陥るのである。そして瞬間的な快楽主義に堕ちていくしかなくなる。

これがマホメットが遭遇した砂漠の民の精神の危機であった。




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